「……おまえな。いま俺に襲われても文句言えねんだぞ」
「倫は全然大丈夫だよ?」
アホか。俺が大丈夫じゃねーんだ!
「ひかるは結構色んなコと付き合ってきたクセに、倫だけは相手にしてくれないよね」
「そりゃあ……だっておまえ、オムツのころから一緒にいたし」
「えー。そんなの理由になってないもん。どうせ『妹みてーなもんだから』とか言うんでしょお」
そんなこと言われたってなあ。倫はすげーかわいい妹で、それ以上でも以下でもなくて。たしかに色んなとこがでかくなったとは思うけど、ぶっちゃけいまさらドキドキしたりしない。
ぷいっと口を尖らせて拗ねる倫を見上げながら、わざとらしくため息をついてやった。
つか、変なモノマネをするんじゃねーよ。
「やっぱりひかる、他に好きなひとがいるんだなっ」
「……いねーって」
「嘘だ。ぜーったい嘘!」
「しつけーなあ」
晶や日和さんと倫は3つ違うから、倫は日和さんのことは知らない。べつに、知っていたって言うつもりなんてないけれど。
俺に乗ったままギャンギャン喚く倫を宥めて、きょうのところは帰らせた。時間も時間だし、一応家まで送ってやった。
帰るなり、晶に「いじわるしなかった?」と訊かれたのがどうしようもなく鬱陶しくて、「うっせー」とだけ答えた。そしてすぐに寝てやった。
古典の小テストなんか知るか。俺だって、できることなら日和さんに勉強教えてもらいてーわ。