カレーが半分ほど減ったところで、「そういえば」と晶が口を開いた。


「さっき倫(りん)が来たよ」

「倫? なにしに?」

「勉強教えてほしいって。燿まだ帰ってきてないよって言ったら帰ったけど」

「へー」


風間(かざま)倫は、近所に住む俺の2つ年下の女だ。幼稚園のころから何故か物凄く懐かれている。


「つか、勉強なら晶に教わればいいのに」

「倫はあんたがいいんでしょ。大好きな燿に会いたいだけだよ」

「変な言い方すんなって」


今年高校受験の倫は、俺と同じ高校に入りたいと言って、物凄くがんばっているらしい。

昔はよくうちに来ていたし、そのときは遊んでやったけど、いまは俺も部活ばっかりで。しかも、もう少しで大切な大会も始まるし。

倫のことはかわいい妹みたいに思っているけれど、正直いまはあいつの勉強を見ている余裕なんか微塵もない。


「またそうやってはぐらかしてー。倫は小さいころから燿のことが大好きで仕方ないのに」

「うっせーなあ」


ガキのころの「大好き」が、まさか未だに継続中だとは思わなかった。15にもなって嘘だろ。

とは言うものの、俺もなんだかんだで日和さんのことが好きだし、人のことは言えないわけで。


「ごちそーさま」


倫のことは嫌いじゃない。むしろ結構かわいがっていると思う。

でもそれとこれとは違うんだって、恋愛偏差値マイナスの晶には分かんねーかもしんねーけど。