年頃の姉が恋をした。ひとつ上の、18になる姉だ。

俺に言わせてみれば今さら感満載なのだけれど、ヤツは最近になってようやっとその気持ちを自覚したらしい。

相手は俺の先輩。姉とは不釣り合いなほど良く出来た男ではあるが、まあ、そこらへんの変な男に引っ掛からなくてよかったんじゃねーかとは思っている。


「――つってもなあ……」


この18年間、男の陰すら皆無だった実姉が、突然ピンクのオーラを放ちまくっているというのは、なんとなく居心地が悪いわけで。


「なんだよ、渋い顔して」

「いや。晶に彼氏が出来るかもしんなくてさー」


もはや日課になりつつある部活後のシュート練習。星が輝き始めた外を見ながらそう言うと、一緒に居残っているチームメイトの大河(たいが)が目をまんまるにした。

そして、笑った。


「……ぶはっ。やっぱり燿ってただのシスコンだよなあ!」

「ちっげーよ! つか『やっぱり』ってなんだよ!」

「いやいや、だってその男にヤキモチ妬いてんだろ?」


べつに、そんなんじゃない。健悟さんは俺の憧れだし、文句なんかひとつもあるわけがない。というかむしろ、嫉妬するなら晶に、だ。

悔しいから晶には言わないでおくつもりだけど、ふたりが上手くいくのは時間の問題だろうと思う。健悟さんはのほほんとしているから微妙だけど。男どうしだからこそ、なんとなく分かることだってある。

健悟さんが本当の兄になるかもしれない。それは心から嬉しいことのはずなのに、……やっぱり、なんかもやっとする。