燿は少し不機嫌そうだった。言葉と表情が裏腹すぎて、むかつくはずなのにちょっと可笑しい。ただし、これはハーゲンダッツ効果も大いにある。
「なんのお詫び?」
「なんのって……おまえが結構マジで怒ったから。文化祭んときな」
「で、やべーなーと思ってコレ?」
「やべーっつか……せっかく健悟さん来てくれたのに、台無しにしたかもって」
本当にな。台無しにされっぱなしだっての。こんなアイスのひとつやふたつで許されると思うなよ。
それでも、めずらしくしゅんと目を伏せる燿を見ていると、それ以上は責める気にもなれなくて。ハーゲンダッツもくれたし。
それに。なによりも、先輩に浄化してもらったのは、とっても大きい。
「……悪かった、な」
「ほお」
「公害は言いすぎた」
「ほお」
「なんだよー。まだ怒ってんのかよー」
思わず笑ってしまった。あの燿が、いきなりそんなふうに弟の顔をしたりするから。
そんなにかわいい顔ができるならいつもそうしてりゃいいのに。いや、それもそれで気持ち悪いんだった。却下。
「べつに、あたしも鏡見て同じこと思ったし。やっぱキョーダイだね」
アイスの蓋をベリベリと開けながらそう言うと、燿は少し驚いた顔をして、すぐにまた居心地の悪そうな顔に戻る。
お、いい感じに溶けてる。ハーゲンダッツは少し溶けてから食べるのが最高に美味しいんだ。