それにしても、良いことと悪いことが半分ずつあった日だった。先輩に貰った良いこと。燿にぶん投げられた悪いこと。いつか倍にして投げ返してやる。

本当は良いことだけ考えたいんだけど、すぐ下でヤツが風呂に入っているのかと思うと、やっぱりそうもいかなくて。

どこまで邪魔するんだ、あの醤油野郎は。せめていい夢くらい見させてくれ。


そう思って大好きな音楽をかけたとき、部屋のドアが開いた。ノック無しで。


「――晶。起きてっか?」


ノックくらいしろや!

と、文句を言ってやりたかったのだけど。どことなく丸みを帯びた弟の雰囲気を感じて、「起きてるけど」と普通に返事をしてしまった。


「入っていい?」

「いいけど、なに?」

「いや。おまえはいつまで拗ねてんのかなーと思って」

「は? 喧嘩売ってんの?」


いつもならここで開戦。けれどきょうは、燿は無言のまま、枕元にぽこんとなにかを置いた。


「……お詫び」


遠慮がちに佇んでいるのは、あたしの大好きなハーゲンダッツ。ラムレーズンを選んでくるのがなんとも我が弟らしいと、17年間の重みを思い知る。

だって、ハーゲンダッツを大好物だと言ったことはあっても、ラムレーズンまでは口に出していないはずなんだ。