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うちの不良息子は夜の10時を回るころに帰ってきやがった。

右手にコンビニの袋を引っ掛けて。


「たーいまー」


キッチンに立っていたお母さんと、テレビを見ながらビールを飲んでいたお父さんが、同時に「遅い」と言う。

ソファに座ってぼうっとしていた姉はというと、好きなひととの家路をぼんやり思い返してにやにやしていたため、弟の帰宅にすら気が付かなかったわけですが。


「ほんとにご飯用意してないけどいいの?」

「うん。すげー食ってきたもん」

「あらー。どこで打ち上げしてたの」

「駅前のイタリアンビュッフェ貸しきってやってた。死ぬほど食ったー」


お母さんと話しながら、ネクタイを解き、制服を脱ぎ、それをポイポイとソファに投げ込む。さすがはバスケ部と言うべきか。そのシュートは正確にあたしの頭に降り注いでくるのだから、途端に脳内の花がすべて散った。

こんの、クソ野郎が……!


「つか、いい加減リビングで脱ぐのやめろ!!」

「うっせーなー。おまえみたいにだらしない身体じゃねんだからいいだろー」

「誰もあんたのパンイチなんて見たくねーんだよ!」


なにが仲直りだ。むしろ再び開戦だ。


「なに苛々してんだよ。怖い女はモテねーぞ」

「うっさい寝るっ」


せっかく先輩に浄化してもらったのに台無しだ。台無しにされっぱなしだっての。

こんなのが愛情表現だったら、世の中はたぶん、物凄く間違っている。