こないだの帰りと同じだと思った。先輩はあたしの歩幅に合わせて歩いてくれて、それがなんとも自然で。

心臓はうるさいほどに暴れているのに、そんなことを考えられるほど余裕のある自分が少し可笑しい。


先輩は他愛もない話をしてくれた。学校生活のこと、部活のこと。先輩の話は高校生のあたしとってにはどれも新鮮で、大学生と高校生の差を嫌でも感じさせられる。

きっと、先輩にとってあたしは妹みたいなものなんだろう。それでもいい、それでもと、こんな時間を愛おしく思うあたり、あたしもかなり重症だ。


同じようにあたしも色々なことを話した。それが弟の愚痴に変わったころ、先輩が息を吐いて笑った。


「おまえさー、あんまり燿のこといじめてやるなよ」

「失礼な。あたしのほうがいじめられてるんですよっ」

「あはは、そうかあ?」


そうです。きょうも公害だなんて言われて、乙女のガラスのハートはズタボロです。


「でも、燿ってすげーシスコンじゃん?」

「はい?」

「まだまだガキだからあんな態度ばっかり取ってるけど、あいつっていつも晶の話ばっかりでさ。あ、でもおまえも燿の話ばっかりだし、ものすげーブラコンか」

「ち……違いますよ!! 断じて!!」

「んー? 嫌よ嫌よも好きのうちってな。わはは」


ワハハて、あなた。

だって、もしあたしがブラコンであいつがシスコンなら、こんなに日常的に戦争は勃発していない。ていうかまず、それは結構本気で気持ち悪い。

昔から思っていたけど、先輩はちょっと天然なのかもしれない。マイペースというか。

どんな視点から見ればヤツがシスコンに見えるんだ。