それからは胃のあたりがむかむかして、燿たちが帰るまでお店には出なかった。もう裏で愚痴大会。きょうだいを持つ同志たちと深く分かり合って、それぞれの不満をぶちまけたりして。

なかにはきょうだいラブ!ってやつもいたけど、そんなのはレアケースだった。みんななにかしらの不満を持って生活しているんだと知って、少し気が楽になった。


帰り際、水谷先輩が声を掛けてくれたけれど、隣に燿がいると思うと上手く笑えなかった。

べつに燿のこと嫌いじゃないんだけどな。だからこそ、こんなふうにしょうもない口喧嘩をするのはもうそろそろやめたい。……とは、思っている。



そんなこんなで日も沈み、後片付けも済ませて、学校の灯りもぽつぽつと消えて。


「……えっ?」


さあ帰ろうとスマホを開くと、水谷先輩からLINEが入っていた。二度見した。だってそこには、『終わったら一緒に帰ろう。校門の前で待ってる』って、そう書いてあったんだ。

……まさか、見間違いじゃないよね?


「なに、どしたー」


不思議そうに首を傾げた日和が、そのままあたしのスマホを覗き込む。そしてがばっと顔を上げると、勢いよくあたしの肩を叩いた。


「ちょっと……! これ絶対、絶対メイド服効果だよ!」

「でもLINE来たの1時間前……」

「いますぐダッシュしな!」

「は、はい!!」


いきなりこんなミラクルが起きるかっての!

頭の中ではそう思っているのに、身体は思いきり全力疾走しているのだから、恋ってのはなんとも厄介な病気だ。