日和に「行け」と言われたので、そのテーブルはあたしが注文を取ることになった。


「じゃあ俺はジンジャーエールで」

「か、かし、かしこまりましたっ」


ジンジャーエールの金色のしゅわしゅわが、きっと爽やかな笑顔によく似合うのでしょう。

水谷先輩のジンジャーエールになりたい。なんて変態的なことを考えていると、彼と向かい合って座る不機嫌ヅラが嫌でも目に入った。


「……コーラ」

「かしこまりましたー」

「はあ……日和さんに注文取ってほしかった……」

「悪かったなあたしで」

「ほんとにな。ここメイドカフェじゃねーのかよ」


クソ、ぶん殴りたい……!

水谷先輩がいなかったら、きっとこの場でこいつの椅子を蹴りあげるくらいのことはしていた。さっきさんざん暴言を吐いておいてって感じだけど。

それでも、水谷先輩を目の前にすると、本能的にかわいこぶってしまうというか、なんというか。


結局、飲み物は日和に運んでもらうことにした。彼女は納得していないふうだったけれど、もう一度ヤツと言葉を交わしたら今度こそ蹴りあげてしまうような気がして。

日和がテーブルに向かうと、突然ぱあっと表情が明るくなるんだもんな。そんなに日和が好きか。

……そんなにあたしが嫌いか。

幼稚園のころ、行きたくないとびいびい泣き喚くあんたの鼻水を拭いてやったのは誰だと思ってんだ。お気に入りのハンカチだったんだぞ。この野郎。

せっかく先輩に嬉しいことを言ってもらったのに、燿のせいで全部台無しだ。