お店は思っていたよりも繁盛して、思っていたよりも大変だった。

学年トップの成績から外れたことがないからか、全然知らない生徒に「東出(ひがしで)さんだ!」なんて言われたり。明らかに2年生のやつから「燿の姉ちゃんだー」なんて言われたり。誰だよ、おまえは。

それでもメイドちゃんをやっている以上、かわいらしいキャラでいなくちゃいけなくて。もともと接客なんてもんは向いていないあたしが、裏で日和に泣き言をこぼしだすようになったころ、不意打ちで、そいつはやって来た。


「――日和さーんっ」


嫌な声がしたと思ったときにはもう遅かった。あたしが振り返ったと同時に、燿が中途半端な笑顔のまま、フリーズした。


「……ひ、ひか、る」

「晶……なにやってんだおまえ……」

「こ……こっちも好きでやってるわけじゃねーよ!」

「だろうな! 俺も好きでおまえのメイド姿なんか拝みに来てるわけじゃねーしな!」


だったら帰れよ!!


「それにしてもマジで公害だな! ポリューションだな!」

「うるせーよ! 馬鹿が横文字使うな!」


唐突に開戦してしまった姉弟戦争に、周りの生徒は爆笑、うちのクラスの生徒はおろおろ。

ポリューションってなんだよ。そんな横文字使ったところで全然かっこよくねーよ。むしろ頭悪そうだよ。


もう歯止めが効きそうもなかった。どれもこれも、開口一番むかつく台詞を吐いた燿のせいだ。それに、慣れない接客にストレスも溜まっていたのもあって、もう爆発するしかなかった。


「――相変わらず仲良いなあ、おまえら」


……それなのに。

そんなときに好きなひとが登場したりするんだから、世の中は無情だ。