すぐにお風呂に入って、身体や髪に染みついた焼肉の匂いを落とした。実家の浴槽は広々としていて最高だ。家を出るまではそんなこと思いもしなかったのに、不思議なもので、いまは実家のすべてがありがたくて仕方ない。
長い入浴を終えてリビングに行くと、すでに弟は帰って来ていた。
「ちょっと燿、遥香ちゃんほんっとにかわいくていい子でびっくりした。どこで引っ掛けたんだよ」
「うるせーなあ。どこでもいいだろ」
「なに照れてんの。さては相当好きだな。燿が女の子連れてくるなんてはじめてだもんねえ」
「だからうるせえって」
弟は口をとがらせながら「風呂」と吐き捨て、そそくさとリビングを出ていく。なんだよ、かわいくないな。そんなだと遥香ちゃんに振られるのも時間の問題なんだからな。
冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出して、そのままどかりとソファに座った。やっぱり実家のソファはふかふかで気持ちいい。
お母さんがロールケーキを持ってきてくれた。燿のお祝いの残りらしい。食べながら、東京でのあれこれや、日和のこと、それから先輩とのことを話した。
なんだろう。家を出てから、お母さんととても仲良くなった気がする。お母さんってすごいんだなって、自分たちで家事をやるようになってから、日和とは何度も話した。