遥香ちゃんはとてもかわいらしくて、可憐で、いい子だった。おきれいなお姉さまで恐縮ですと言われたときには、むしろこっちが恐縮だった。身体中から焼肉の香りを漂わせてしまって本当に面目ない。


「……ほんとに燿と付き合ってるの? 騙されてない? 大丈夫?」

「いえ、むしろわたしのほうが付き合っていただいてるくらいで……!」

「ええっ? うそ、どこがいいの、これの」

「かっこいいです! それに優しいし、かわいらしくて、面白いですっ」


いや待ってくれよ。べた褒めじゃんか。

思わず笑うと、燿に「おい」と言われてしまった。とか言いながら、燿だって盛大に照れているくせにね。人前でいちゃつくなよ。この野郎。

なんだか綾さんにはじめて会ったときのことを思い出すなあ。弟の彼女というものに会ったのはこれがはじめてだけど、あのときの綾さんの気持ちがよく分かった。


「じゃー俺、遥香のこと送ってくるわ」

「はいはい、いってらっしゃい。人様のお嬢さんなんだからくれぐれも大切にお送りするんだよ。暗闇に乗じて変なことすんなよ、このサルめ」

「マジでおまえあとで覚えとけよ。たまに帰ってきやがったと思えば相変わらずうっぜえな」


暴言を吐いた弟は、自転車の後ろに遥香ちゃんを乗せて、そのまま夜の闇に消えた。

知らなかったな。燿に彼女ができていたなんて。いつから付き合っているんだろう。それにしても本当にかわいい子だった。またゆっくり話せたらいいな。