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晶と日和さんの引っ越しも無事に終わり、すぐに新学期が始まった。俺も無事に3年生に進級できた。やっぱりなんだか少し物足りない気もするが、最近は晶がいない毎日にも慣れてきたように思う。

それにしても、新学期から受験の話ばかりで気がおかしくなりそうだ。まだまだ部活は終わってないってのに。


「あーあ。やんなるぜ、ほんと」


わざとらしくため息をついた俺の隣で、大河が盛大に笑う。彼の向こう側に、校庭の桜が満開になっているのが見えた。


「たしかに、引退するまではおちおち勉強なんかやってらんねーよな」

「ほんとだよ。今年だけ晶と脳ミソ交換してーわ」

「あはは! 晶さんは元気にやってんの?」

「おー、ぼちぼちやってるっぽい。幼なじみがあいつとマメに連絡取ってるらしくてさ、いちいち報告してくんだけど、すげーだりい」


倫は結局、西高でなく北高を受験して、合格を決めた。いまだに悔しがってはいるけれど、倫にはセーラー服がよく似合うので、よかったんじゃねーかと思う。

相変わらず、時たまうちにやって来ては、好きだのなんだのってうるせーけど。好きでいたいんだとさ。それだけでいい、迷惑はかけないからと言われたら、それ以上はなんも言えねーよ。

倫だって高校生になったんだ。きっとすぐにいい男を見つけて、そのうち俺のことなんかどうでもよくなるだろう。まあ、それはそれで淋しかったりもするんだけどな。兄として。