鏡のなかの顔がさあっと青くなるのと同時に、日和の細くて長い指があたしの頬を撫でた。


「はいっ、完成」

「へ……」

「どうよ、美容師志望のわたしの腕前は?」


得意げに笑う日和の隣には、せっかくきれいにしてもらっているにもかかわらず、馬鹿みたいに情けないあたしの顔。

びっくりした。ヘアメイクってすごいんだなあと、身をもって感心してしまった。

世の男性諸君には悪いけれど、化粧で騙されてはダメだね。だって、こんなあたしでもこんなにきれいになれちゃうなんて……正直、詐欺だ。


「……す、すご……」

「でっしょー。まあ晶は素材がイイから化粧が映えるんだけどねー」


少しはメイド服もサマになっているような、そんな。フリフリも悪くないかな、なんて、結構本気で思ったりして。

鏡の前でぽわーっとしていると、後ろで日和が笑った。


「晶はぜんっぜんキモくないよ。水谷先輩、来てくれるといいよねー!」

「い、胃が痛い……」

「あ。あと燿くんもね!」

「……わざと言ってるでしょ」


水谷先輩には、昨夜、勇気を振り絞りまくって連絡した。文化祭来てくれませんかって、ダメ元で。

でも、部活が終わったら行くって。晶と燿に会えるの楽しみだって。

泣きそうになった。もうあたしめちゃくちゃ先輩のこと好きじゃん。たぶん、中学のころからめちゃくちゃ好きだった。知らなかった。

自分でも気付けなかったこの気持ちを、燿はずっと前から知っていたのかと思うと、あの生意気なクソ野郎が憎くて仕方ない。