「あのさ。……いままでありがとな、晶。なんだかんだでおまえには世話になりっぱなしだったと思う」
笑い飛ばされるか、気持ち悪がられると思った。むしろ言ったあとで鳥肌が立ったのは俺のほうだ。なに言ってんだろう、俺。
でも、晶はぽすんと俺の頭を撫でて、笑った。
「やっぱり燿はあたしの天使だね」
ああもう。泣きそうだよ、こんちくしょう。
「あたしも燿には世話になりっぱなしだった。ありがとね」
「いやマジでな。それな」
「おい殴るぞ」
俺たちはたしかに仲の良い姉弟だった。でもそれはきっと、いまでも変わってなんかいないんだ。
「……東京行ってもがんばれよ、姉ちゃん」
「おうよ。あんたもな。参考書は全部置いてってやるからな」
「は? いらねーよそんなもん。頭いてえわ」
来週、姉が、家を出る。