晶の指がページをめくっていく。日焼けしたそれはめくるたびに音を出すので、なんとなく、17年間の長さを実感した。写真1枚1枚に、ふたりでいちいち笑った。

写真のほとんどは幼稚園から小学校低学年までのもので、4冊目の最後は晶の10歳の誕生日で締めくくられていた。

そういや、いつから写真を撮らなくなったんだっけか。もうずいぶん長いこと撮っていない気がするけれど。


ガキのころ、俺は本当にお姉ちゃん子で、なにをするにも晶の後ろをついて回っていた。いつでも凛としている姉が大好きだった。晶もそんな俺をかわいがってくれた。

俺たちは仲の良い姉弟だったはずだ。


いつから俺は晶に文句をつけるようになったんだろう。いつから晶は俺に回し蹴りをぶちかますようになったんだろう。

いつから、「仲良しだね」と言われて、「そっくりだね」と言われて、全力で否定するようになったんだろうか。


「……俺さあ」

「ん、なに」

「晶にだけは一生勝てねーと思うんだわ」

「は? 気持ち悪いな、突然どうした」

「べつに……」


ふと、画用紙に書かれた『おねえちゃんいつもありがとう』が視界の端に入った。言葉や文字にはもうできなくなった。でも、この気持ちはいまでも変わらねーなって、ぼんやり思う。

サンドバッグにされるけど。八つ当たりされるけど。俺はそんな晶に逆らえないけど。

それでも晶が俺の姉ちゃんでよかったなって、ちゃんと、いまでも思うんだ。