ふと、なつかしいものが出てきた。幼稚園時代のお道具箱。そういや、俺もこれの青色を使っていたっけな。とっくに捨てたけど。

いや、つーか、こんなんも持っていくつもりだったのかよ。こえーよ。

開けてみると、古ぼけた折り紙とか、かちかちに固まった水のりとか、しょうもないもんばかりが詰まっていた。そのなかに、なんとなく見覚えのある画用紙が一枚ぺらりと入っていた。


「う……っわ」

「え、なに」

「やべえ。これ俺が描いたやつじゃん」

「えっ、どれどれ」


クレヨンで描かれたヘタクソな棒人間がふたりと、その下には『おねえちゃんいつもありがとう』というヘタクソな字。たぶん、この棒人間は晶と俺なんだと思う。


「わーなっつかしい! これ、燿が年中さんのときに描いてくれたやつだよ」

「なんとなく覚えてる。『大好きなひとに感謝を込めて絵を描きましょう』ってやつだった気がするわ……」

「あー、あのころの燿は本当に天使だったなー。まさかこんなになっちまうなんてなー」

「は? 俺はいまでも天使だろ。少なくともおまえよりは」


現にこうして引っ越しの準備も手伝ってやってるし。少しは感謝してほしい。


「なつかしいなあ。アルバムもあるんだよー」

「マジで」

「たしかこのへんに……よいしょ」


晶はそう言いながらごそごそと違うダンボールを漁る。

いやおまえ、それも持っていくつもりだったのか。勘弁してくれ。