ぽつりぽつりと、静かな声が雪の上に落ちては溶ける。

それはほとんど晶に聞いた話と同じ内容だったけれど、彼は少しも晶を責めずに、「俺が悪かった」と言った。これくらいの男じゃねーとうちの姉ちゃんとは付き合えねえなって思った。


きのう、帰宅してからお姉さんに相談したこと。お姉さんにすげー勢いで怒られたこと。一睡もできないまま、気付いたら晶に会いに来ていたこと。

笑いながら話してくれたけど、俺はとても、真剣に聞いた。


「……まあぶっちゃけた話、晶に東京になんか行ってほしくねえんだよ、俺は」


正直、その告白には全然驚かなかった。


「でもそんなの口が裂けても言えねえじゃん? おまえもちょっと分かるだろ、かっこつけてたい気持ち」

「いや、そりゃもう死ぬほど分かるっすよ」

「あはは! やっぱりそうだよなー。男ってそういう生き物だもんなあ」

「つか、晶がなんも分かってなさすぎなんすよ、マジで」


何度だって言うが、俺が健悟さんだったらきっとブチギレている。別れ話にまで発展するレベルだと思う。頭が良いくせに肝心なところでそれを活かせていないんだ、あいつ。

それでも、健悟さんはどこまでも優しかった。


「でもなあ、俺だって晶のこと全然分かってなかったんだよ」


その一言に、まるで後頭部をハンマーで殴られたような衝撃が走った。あなた様は菩薩かと。