健悟さんと出会ったのは、12歳の春だった。俺はすげーチビで、健悟さんはチームのエースだった。もうすっげえかっこよかった。いま思えば、あれは完全に恋をしていたんだと思う。

すらりと背の高い健悟さん、スーパーチビな俺。
みんなに慕われる健悟さん、ついていくだけの俺。
優しくて爽やかな健悟さん、生意気な俺。

憧れまくったあのひとと、まさかこんなふうに肩を並べて歩く日がくるとは。気付けばもう身長差がほとんど無い。


「あの、ほんとなんか、うるせー家族ですんません……」

「いやー、すげえ楽しかったよ。突然お邪魔したのにお茶まで出してもらっちゃったし。そりゃ燿も晶も真っ直ぐ育つわなーと思った」

「ええ……」

「わはは。お父さんになんか殴られる覚悟で行ったのに。『晶でいいのか』だもんな。面白い家族だな」

「いや。それは俺もちょっと笑ったっすよ」


晶が最近、女の顔をするようになったように、健悟さんも同じ顔をするようになったと思う。俺の先輩じゃない。もうこのひとは晶の彼氏なんだなって、その横顔を見て実感した。

でもたぶんそれはきっと、いままでよりももっと近い感じなんだと思う。上手く言えないが。


「……きのう、晶、すげー泣いてたんすよ」

「そっか」

「結局仲直りしたんすか」

「んー、べつに喧嘩はしてねえよ? ただ俺がダメで、晶がそれに怒っただけ」


きれいな横顔が、白い息を吐いて静かに笑った。