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「――で。なんで結局あたしもメイド服着てんだよおおお!!」


教室の端で絶叫したあたしに、周りの女子たちは申し訳なさそうに苦笑を浮かべ、日和はやれやれとため息をつく。

きょうは天候にも恵まれ、最高の文化祭日和なのに。たぶん、学校にいるひとたちで唯一、あたしだけが最低の気分だ。


「仕方ないじゃん。諦めな」

「あ、諦められるかばかあああ! キモイ! 絶対キモイ!!」


メイド服を着る予定だった子がひとり、部活の出し物に急遽出ることになったそうで。そうすると人手が足りなくなるわけで。当然、もともと無理を言ってキッチンに入らせてもらうことになったあたしがターゲットになるわけで。

嫌だ嫌だと喚くあたしを、日和はあっさりと押さえつけ、こんな格好にさせられたのであった。


「キモくない。晶は自分で思ってるよりきれいだよ?」

「そういう問題じゃない!!」

「もー。あんまり喚いてると燿くんに写メ送っちゃうぞ」

「ハイすみませんでした日和様」


なにが嫌かって、燿がいることだ。フリフリが苦手なのも本当だけど、燿という悪の権化が校内をうろちょろしているということが、もうこの上なく最低最悪の条件なのだ。

絶対笑われる。ていうか気持ち悪がられる。半年はネタにされる。

なんとか回避せねば。そうは思っても、ヤツは日和のメイド姿を見に来る気満々だということを、残念ながらあたしは承知している。