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本当は、俺から健悟さんになにか言おうかとも思っていた。でも俺がそうする前に、彼は翌日の朝からうちに来ていた。


「おお燿、おはよう。そしてお邪魔してます」

「……え?」


週末の朝ほど気持ちいいもんは無いと思う。10時起床、最高。部活がなけりゃ夕方まで寝ていられるほど、睡眠は好きだ。

きょうもいつもと変わらない土曜だった。10時に設定しておいたアラームに起こされて、枕元の眼鏡を手探りで装着し、あくびをしながらリビングに向かう。正直、結構な間抜けヅラだと思う。

まさかこんな寝起き姿を健悟さんに見られる日が来ようとは、想像すらしていなかった。


「えっ、なん……えっ? えっ!?」


ただでさえ回転の遅い頭が、さっきまで寝ていたせいでもっと回らない。「え」しか言えない俺に、健悟さんはからからと笑った。

その笑顔はまるで、週末の朝の太陽みたいに眩しかった。


「ほら燿、ちゃんと挨拶しなさいよ、お世話になったひとなんだから。そんなだらしない格好で恥ずかしい」


母さんが横目で俺を睨む。

そうか。健悟さんは中学のときの部活の先輩なんだから、母さんも当然知っているのか。母さんは健悟さんを「水谷くん」と呼んだ。


「それにしても、まさか晶の彼氏が水谷くんだったなんてねー。燿が中学生のときからイケメンだと思ってたのよお」


健悟さんは困ったように笑っていた。その隣で、晶はむすっと口を尖らせていた。

……いやいや。ちょっと待てよ。いったいなにがどうなってこうなってんだよ!