思わずため息をついてしまった。すると、晶はまた隣でぴーぴー泣きだした。
「……どうして燿も先輩も、そんなに余裕があるの」
「なにが」
「離れても絶対大丈夫なんていう保証がどこにあるんだよ……っ」
晶は、たぶん。中学のころからずっと健悟さんのことが好きだったんだ。なにも言わなかったし、本人もきっと自覚はしていなかったと思うけど。俺はずっと、なんとなくそうなんだろうなと思って見ていた。
それが高校生になって偶然再会して、色々あって、付き合うことになって。しかもそれがはじめての彼氏で。それまで男の陰すらなかった晶にとっては、世界がひっくり返るような出来事だったと思う。
ピュアなやつなんだ。面倒くさいけど。それもきっと、だからこそなんだろう。
遠距離恋愛なんていまどきめずらしい話でもないのに。まるであした地球が終わるみたいな顔で泣いてんだから、恋ってのはすげえんだなあとしみじみ思うのであって。
年甲斐もなく、そしてガラにもなくびいびい泣いている姉を、どうしようもなくいじらしいと思ってしまった。
「なに見てんのっ」
「べつに」
「半笑いじゃねーかよっ」
「ブスが泣くとさらにブスだなーと思って」
「……ぶっ飛ばすぞテメェ」
健悟さんの前では絶対そんなこと言わねーくせに。
自分を泣かせた彼氏の前ではかわいこぶって、こうして話を聞いてやっている弟はサンドバッグにするのかよ。上等だ。
「なあ……おい、そんなに泣くなよ、姉ちゃん」
おまえが泣いてると調子狂うんだ。なんか俺も泣きたくなる。
俺が泣いているときは、晶はいつだって背筋を伸ばして叱咤激励してくれていたのにな。情けねえな。
やっぱり俺は、どんなにかっこつけたって、こいつの前では弟なんだ。