晶はいったいなにが気に入らないのだろう。なにをそんなに泣いてんだろう。
「でもさあ、先輩は全然淋しそうじゃないんだよ。あっさり笑顔でそう言ったんだよ。なにそれって感じじゃん……」
「あー」
「もしそれが本心ならそれはそれで嫌だし、本心じゃないとしても嫌だしさあ……! なんなんだろう!!」
「あー」
頭が良いやつってのは面倒くさい。そんなに深く考える必要ないんじゃねーかと思うのは俺だけだろうか。素直に「ありがとう」って言っとけばいいのになあ。
男と女とでは感性が違うのかな。まあ、脳の作りも違うって言うしな。
それにしたって面倒くせーよ。彼女にこんなこと言われたら喧嘩になる自信あるわ。
「ちょっとあんた聞いてんの」
「聞いてんじゃん」
「ずかずか勝手に乗り込んできたかと思えばその態度! なにそれ!!」
「なんで俺が怒られてんだよ……」
よくこんな女に付き合っていられるなと、ちょっと健悟さんに同情した。姉が本当にお世話になってます。ほんとすいません。
「おまえさあ。仮にこっち残ったとしても、そんなんだったら続くもんも続かねーぞ?」
「……じゃあどうしたらいいの」
「健悟さんを信じて東京行けよ」
……で、黙るのか。やっぱり腑に落ちないらしい。
俺は晶に比べたら相当馬鹿だし、男だから、こいつの気持ちなんか全然分かんねーな。健悟さんの気持ちのほうがよっぽど分かるよ。