ふたりのつながりだって、もともとは俺の存在があってこそのものなのに。いまではもう俺なんか蚊帳の外で、ふたりの世界って感じだもんな。嫌になる。
同時に、こんなことを思う自分も、嫌になる。
「……あたし、東京、行かない」
晶が信じられない言葉を放った。
「は? マジで言ってんの? S大蹴るのかよ?」
「うん……こっちの大学受け直す。センターはいちおう申し込んであるし……」
「いやいや。そういうことじゃねーだろ。まさか健悟さんと離れたくないからとか言わねーよな?」
そう問うと、その目はばつが悪そうに伏せられて、そのくちびるは言葉に詰まった。どうやら図星らしい。
我が姉ながら、これはちょっとひどすぎる。
「だ……だっせ……」
「はあ!? こっちは真剣に悩んでんのに……!」
「いやおまえ、それはさすがにだせーよ」
もし自分の彼女がこんなことを言いだしたらと思うだけで、正直ゾッとする。
たしかに、晶の離れたくないって気持ちはよく分かる。俺だって好きなやつとはそりゃ一緒にいたいし、実際いざ離れるとなればきっと想像以上に淋しんだろう。健悟さんだって同じだと思う。
でも、男としてはさ。そこはやっぱり笑顔で「行ってこい」って言ってやりたいところなんだよ。間違っても「行くなよ」なんて、口が裂けても言えねーよ。かっこわりいじゃん。
晶はちょっと男心ってもんが分かってなさすぎる。
「健悟さんはなんて言ってんの」
「『応援してる』って……」
ほらな。