放っておきたいのはやまやまだ。もう寝てしまいたかった。それくらいには眠たかったし、晶もきっと泣き顔なんか見られたくないだろう。
でも、なんとなく、無視する気にはなれなくて。
余計なお世話だとは思う。でも、滅多に泣かない晶がいまひとりぼっちで泣いている。そう思うと、居ても立っても居られねえよ。だって俺、弟だもん。
「――晶?」
ノックはしなかった。いつもは忘れるだけなんだけど、今回はわざとだ。
「ひっ、ひか……!?」
「夜中にずびずびうるせーよ」
どうして憎まれ口しか叩けないんだろうと、自分でも嫌になる。
晶はベッドの隅で膝を抱え込んでいた。涙に濡れた頬が姉の顔にはあまりにミスマッチで、上手く言えないが、なんつーか、すげえ気持ち悪かった。
「いや、え、ちょ、待……」
「なんかあったんだろ?」
「いやいや……いきなり入ってきて、あんたね」
顔面はもうごまかしきれないほどびしょびしょのくせに、晶は急いで涙を拭う。
それでもあとからあとからあふれるそれを止めることはできず、彼女は途中で諦めたのか、開き直ってわんわん泣いた。子どもかよ。
「見んなばかっ。どっか行け!」
「やだ」
だって俺がいまどっか行ったら、またこいつはひとりぼっちで泣くんだ。晶はそういうやつだってこと、俺がいちばんよく知っている。