「晶はさー、めちゃくちゃ頭いいのに、それ以外のことはまったくダメだよね」

「……うるさいな」


そう。自分で言うのもなんだけど、あたしはたぶん、勉強はできるほうなんだと思う。

小学生のころから、勉強で1番以外を取ったことがなかった。この高校にも首席で入学したし、いまだにどのテストでも1位から外れたことがない。

べつにガリ勉ってわけじゃないんだけど。授業聞いてりゃできるって言うと日和が怒るから、それは言わないようにしている。


「運動神経もよくないし、恋愛もぜーんぜんだし」

「容赦なさすぎ……」

「それに、美人のくせにヤンキーみたいな喋り方する」


それは自覚している。喋り方のほう。昔はお母さんへのプチ反抗のつもりでわざとやっていたけれど、もう抜けなくなってしまったんだ。


「でも晶って、水谷先輩の前ではすごくカワイイんだよ」


日和がずいっとあたしの顔を覗き込んだ。

その表情には、馬鹿にしているだとか、面白がっているだとか、そんなの微塵もないように見えた。


「ね、がんばろうよ。文化祭呼んじゃお!」

「……う、ん」


分からない。恋とか、そういうの。本当に、それこそ無頓着だったんだと思う。

ただ、あまりにも日和が嬉しそうに笑うので、頷くしかないと思った。

水谷先輩に会いたいのも本当だ。そんなことを言われると、文化祭を一緒に歩けたら……なんて馬鹿なことを、どうしても考えてしまうよ。


「よーし、じゃあ晶もメイド服着よう!」

「いや、それとこれとは違う」


いつになく乙女思考な自分が気持ち悪い。こんなの死んでも燿にだけは知られたくないなって、頭の片隅で思った。