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やっぱり待ち合わせで先輩には勝てない。どこまでも広がる真っ白のなかで佇む彼はきれいで、うちの学校の王子にも引けを取らないんじゃないかと思うのは、さすがに彼女のひいき目ですか。

雪のなかでも短いスカートのあたしを見るなり、彼は「見てるだけでさみい」と言う。いや、平気な顔してるけど、実はもう感覚がないくらいには冷たいんだ。


「……あの、健悟さん」

「ん?」

「あの……」


会うなり本題に入るのはどうかと思ったけれど、こういうことは早く言ってしまったほうがいいような気がした。早く言ってしまわなければ、きっともっと言えなくなる。

嫌だよ。言えないまま、なんとなく東京に行って、なんとなく不安が募って、なんとなくダメになってしまうなんて。

つながっている手をぎゅっと握り直すと、先輩は心配そうにあたしの顔を覗きこんだ。


「……晶? どうした?」


どうして駅ってのはこんなにも人がたくさんいるんだろう。この雑踏と雪のせいで、先輩の声が耳に届かないし、その優しい顔が見えない。

それでも指先から伝わる温もりに安心できるのに、春からこれすらも無くなってしまうのかと思うと。もう、耐えられないよ。


「健悟さんは……離れるの、こわくないですか?」

「晶……?」

「……あたしが東京行っちゃっても、平気なんですか……?」


視界は恐ろしいほど真っ白だ。