日和はどうなんだろう。わざと田代に厳しくしているように見えるけど、まだふたりが想いあっていることは明確だ。それでも日和はなにも言わないし、たとえもしよりを戻しても、彼女は東京に行くんだろうなとは思う。

でもそれを口にするのはなんだか無粋な気がした。いつか日和から話してくれるのを待とう。


「……あ、雪降ってきたね」

「ほんとだ。やだな、寒いじゃん」


日和が窓の外に降り始めた雪を見つけた、ちょうどそのとき。ふと肩を軽く叩かれた。振り向くと、クラスメートの女の子がいた。


「晶ちゃん、王子来てるよー。用事だって」

「え、あたしに?」

「うん。後ろのドアのとこ」


彼女につられて目線をそちらに向けると、そこにはすらりと背の高いイケメンが。『王子』こと水無月(みなづき)くんは、入学したときから騒がれていた、隣のクラスの美形だ。

相変わらずイケメンだなあと思って見ていると、ふと目が合って、軽く頭を下げられた。慌てて彼のほうへ向かう。


「お昼中にごめん」

「ううん。なに?」


水無月くんには独特の雰囲気がある。顔はとても整っているくせに、その空気はどこか気だるげで、ちょっととっつきにくいなあってのが正直なところ。

彼はどちらかというと、仲良くなりたいタイプのイケメンではなく、遠くから眺めていたいタイプのそれだと思う。

ちなみにあたしもこうして話すのはこれがはじめてだったりする。