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文化祭の準備は順調に進んでいた。

教室のそこら中にぶら下がっているふりふりのメイド服は、市販の黒いワンピースに、手芸部が手を加えて作ったものらしい。まるでプロが作ったようなその出来栄えに、素直にすげーと思った。

いや、間違っても絶対に着たくはないんですが。


「晶も着てみればいいじゃん。一緒にお店出ようよー」

「絶対やだ」

「んもー」


出来上がったメイド服を身体に当てがいながら、日和がかわいらしく頬をぷくっと膨らませた。

本当によく似合っていると思う。悔しいけど、彼女に比べたら、あたしのメイド姿なんてどう考えても公害だ。


「うちの文化祭は一般参加も有りなんだしさ、水谷先輩呼んだらいいじゃん」

「いっ……!」


うちのお店の看板は布製。ハンドメイドな雰囲気を出したいからって。

裁縫はあまり得意じゃないけれど、簡単な作業だからと任されていたその細い針が、思いっきり左の人差指に刺さった。

日和が変なことを言うから。


「中学のころから好きだったんでしょ」

「べ、べつに水谷先輩はそんなんじゃ……」

「じゃあどんななの」

「……憧れ? ……的な?」

「えー18にもなってそういうのキモイ」


今度は日和の言葉が思いっきり刺さった。見えないけれど、いま確実に心臓から血が噴射していると思う。