あっという間に美味しそうな料理たちがテーブルの上に並んでいた。どれも本当に美味しそうで、もっとお腹が減った。
綾さんと、先輩と、あたし。3人でテーブルを囲む。ご両親はきょうは留守にしているらしい。
「……んん、美味しい!」
ハンバーグを一口食べてみると、じゅわっとあふれた肉汁が、コクのあるデミグラスソースと絡んで、まるで奇跡みたいな味になった。
「ほんと? よかったあ! ソース失敗しちゃったかなあと思ってたんだけど」
「えっ、ソースも綾さんが作ったんですか!?」
「うん、そうだよー。晶ちゃん、本当に美味しそうに食べてくれるから嬉しいなー」
こんなに美味しいものを食べて興奮しないほうが異常ですよ。本当に美味しい。まるっと5個くらいはいけそうだ。
「ところで。晶ちゃんは健悟のどこが好きなの?」
「――げふっ」
いきなり変な質問をしないでほしい。思わず噎せたじゃないか。
同時にあたしの隣で先輩も思いきり噎せていて、ふたりしてゲホゲホしていると、綾さんは面白そうに笑った。
「だってこいつヘタレだよ? もっと男らしいのだって他にいっぱいいるでしょうに」
「……いや、その、えっと。……すっごく、優しいです」
「わはは! そっかそっかー! よかったねえ、健悟。わたしの教育の賜物だねえ」
本当に先輩と笑い方がおんなじ。先輩は「うるせー」と口を尖らせて、グラスに入った水を一気に飲み干した。