身体の強張りとは裏腹に、あたしの首はロボットみたいに縦に動いていた。


「……そういうことなら、ぜひ」

「マジで! うわーほんとにごめんな! でもたぶん、そんなに悪いやつじゃねえし、安心してほしい」

「はい……がんばります」

「がんばんなくていいよ。もー俺マジで姉ちゃんに逆らえなさすぎて悲しい……」


先輩が弟の顔をしてうなだれている。いつも、あたしや燿の前では年上っぽい顔しか見せないから、なんだかこんな顔は新鮮だ。

それにしても、先輩にこんな顔をさせてしまうお姉さんとやらは、いったいどれほどのお方なのだろう。先輩のお姉さんなんだからきっととってもきれいな女性なんだろうな。

……あたしみたいなのが彼女でがっかりされたりはしないだろうか。


「でも、姉ちゃんいちおう調理師免許持ってるし、メシはほんとに美味いと思うよ」

「ほんとですかっ」

「おお、急に元気になったな、おまえ」


こんなことならなにか手土産でも持ってくればよかった。しまった。手ぶらでお邪魔するなんて、そして夕食までご馳走になろうなんて、さすがに申し訳なさすぎる。

でも先輩は「気にしなくていいよ」と言ってくれた。姉ちゃんのわがままに付き合わせるんだからって。いつもの優しい笑顔じゃなく、とても困った顔でそう言うんだから、ちょっと笑えた。