日和からはすぐに返事が来た。『ばっちりだよ!』と、かわいい顔文字つきで来たから嬉しくなって、普段は絶対に穿かないシフォンスカートをふわりと揺らしてみる。

そのとき、鏡のなかで弟と目が合って、しまったと思った。そう思ったときにはもう遅かった。案の定やつは馬鹿にした顔で笑った。


「まー、でもいまのうちにめいっぱいイチャイチャしとけば」

「……なにそれ」

「だっておまえ、あれだろ? S大行くってことは春から遠距離じゃん。健悟さんこっちの大学だし」

「あ……」


両想いになれたことが嬉しくって、それだけでいっぱいいっぱいだった。そんなこと考える余裕なんかなかった。

そっか。……春からあたし、東京に行くんだっけか。


「……スカート、なかなかいいんじゃねーの」

「えっ」

「好きな女が自分のためにがんばってくれるってのは、男としてはめちゃくちゃ嬉しいもんだよ」

「……急になんだよ」

「べつに。おまえはちゃんと最大限の努力してんだから、あんまり変なことで不安になるなよって話」


そう言い残して、弟は大きなあくびをしながら部屋を出ていく。まずはお尻まで下がったそのスウェットを直せ。

それにしても。普段は馬鹿な弟が突然真面目なことを言いだすので、何事かと思った。あいつなりに心配してくれてんのかな、とも思った。

先輩と付き合うことになったと報告したときには「あっそ」としか言わなかったくせに、なんだよ、急に。気持ち悪い。