鏡に向かってパシャパシャ写メを撮るあたしを、燿はあきれたように見つめた。


「よかったな。無事に健悟さんと付き合えて」

「……おう」

「まさか晶が男のために服を選ぶ日が来ようとは。眠気吹っ飛ぶわ」

「おい。どういう意味か言え。言う前にぶっ飛ばすけど」


メイクのやり方は日和に教えてもらった。先輩と付き合うことになった翌日の放課後、コスメショップに連行されて、そのすべてを彼女が選んでくれた。

晶にはピンク系よりもオレンジ系のチークが似合うだとか。グロスはつけすぎないほうがいいだとか。晶は素材がきれいだからあんまり塗りたくるとよくないんだよって、かわいい日和が笑顔で言うもんだから、素直に頷いたりして。

ファンデーションの乗せ方からイマドキ眉毛の作り方まで、きょうは全部が日和仕込みのあたしだ。ちなみに髪型も同様。


「きょう健悟さんとどこ行くの」

「水族館」

「……おー、イルカ見てくんの?」

「ううん。見たいのはシロクマ。あとペンギン」

「いや、そこはべつにどーでもいいわ」


水族館をリクエストしたのはあたしのほう。恥ずかしいのであまり明るいところに行きたくなかったというのと、なんとなく、最初のデートで水族館ってのはテッパンな気がしたから。

先輩はちょっと笑って、だけどちゃんと「いいよ」と優しく言ってくれた。

どきどきするけど楽しみだ!