なんだか、そう思うとちょっとだけ悔しかった。いや、淋しい、って言ったほうが、なんとなくしっくりくるような気がした。


「……燿は、いるの? 彼女」

「べつに」

「なに誤魔化してんの。そこははっきり言えよ、男でしょ」

「あーもーうるっせえな。いねえよ、そんなもん。部活ばっかりしてるし」


なんだ、紛らわしいじゃん。でも少しほっとした。

……そうだな。でも本当に、いつか燿が女の子を連れてきたら、あたしはどんな態度を取るんだろう?

どんな気持ちになるんだろう?


ふてくされている燿の横顔は年相応だ。黙ってうどんを頬張るその姿はまるでハムスターみたいで、かわいかった。


「……おい。笑ってんじゃねえブス」

「笑ってないよ」

「いまは俺の話じゃねえだろーが」

「分かったって」


燿はじとっとあたしを見ると、ごくごくとだし汁を飲み干して、黙ってソファを立った。相変わらず食べるのが速くて感心する。


「寝る」

「なに拗ねてんの」

「拗ねてねえし。おやすみっ」

「ぶふ、おやすみ」

「半笑いうぜえ!」


燿とこんな話をするなんて新鮮だ。

久しぶりに弟をかわいいと思った。たぶん5年ぶりくらい。あのころの天使な燿とは程遠いけど、まだまだかわいいとこあるじゃん。


「……あ。おい燿、醤油とジャンプ片付けてから寝ろっ」


絶対わざとだ、あいつ。やっぱり全然かわいくねーよ。