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きょうは午後から部活らしい弟を、朝の9時に叩き起こした。それでも布団のなかに逃げようとするその身体を引きずり出してやると、燿はほとんど開いていない目であたしを睨んだ。


「……うぜー」


大きなあくびをしながら、お尻まで下がったスウェットを直しもせず、ぼりぼりと腹を掻く。だらしない。ただ、渋々ながらでもきちんと起きてくれるあたりがこの子の甘いところだと思う。

まあ、うぜえだの眠いだの、ぶつぶつと文句は垂れまくっていたのだけど。


「朝っぱらからなんなんだよ……」

「あのさ。きょうのあたし、どっか変じゃない?」


弟にこんなことを訊くなんて相当気持ち悪いってことは自覚している。

でもいまのあたしに頼れるのは燿しかいないんだ。ファッション雑誌なんて恥ずかしくて買えないし、だからといって自分のコーディネートに自信があるわけでもない。

それでもテキトーな服は着られないわけで。気合を入れるのはあたりまえだ。

だってきょうは、先輩と付き合うようになってはじめてのデートなんだから。


「……んなことのために起こされたの、俺」

「ちゃんと品定めしてくれたら二度寝していいから!」

「日和さんに写メでも送って訊けよ……」

「あっそうか! そうする!!」

「……馬鹿か」


日和はこっちの分野のプロ。に、なろうとしている子。昔からセンスのかたまりみたいな女の子だったし、この手の職業は彼女にとって天職だと思う。

そっか。はじめから日和に訊けばよかったのか。