いつの間にか陽が完全に落ちきっていた。冬独特の空気が頬を撫でて、公園の暗闇を感じたので、反射的にマフラーに顔を埋める。

暗いところは好きじゃない。小さいころ、あたしが入っているとは知らずに、お母さんが小屋の鍵を閉めてしまって。果てのない暗闇と孤独を体感したあの一日から、どうしても暗闇がこわい。


ふと沈黙が落ちた。息を吐くたびに闇のなかに浮かぶ水蒸気はすぐに消えてしまうから、なんだかとても不安になる。


「……あのさ。まだ、気持ち変わってないか?」

「えっ」

「俺も、その。……晶のこと、好きなんだけど」

「えっ」


えっ? ……いま、なんとおっしゃいました?


「……う、うそだ……」

「いや、なんでだよ。結構いっぱいいっぱいだぞ」

「だって先輩が……先輩があたしのことなんか、だって……うそだ……」


うそ。本当はちゃんと分かっている。先輩がそんな嘘をつくひとじゃないってことくらい。

でも、だからこそ混乱して、わけ分かんなくなって、涙が出るんだ。びっくりした。まさか自分が恋愛ごとで泣くなんて、想像すらしていなかった。

最近のあたしは泣き虫だ。燿のこと言えないじゃん。


「わはは、なんで泣くんだよ」

「だって……うそだもん……っ」

「嘘じゃねーよ。俺、晶のこと好きだよ。たぶん、晶が思ってるよりもずっと前から、好きだった」


先輩が立ち上がり、あたしの前にしゃがみ込む。ココアを包み込んでいる両手を、それよりももっと大きな先輩の手が、やわらかく包んでくれた。

内側も外側もあまりにあたたかくて、もっと涙が出た。