先輩の姿なら誰よりも早く見つけられる自信がある。それなのに、彼のほうが早くあたしを見つけて「よお」と声をかけてくれるんだから、あたしはこのひとが好きなんだ。
3週間ぶりに会うのに……やっぱり、すごく好きだな。
「待たせちゃってごめんなさい……!」
「いいよ、俺が呼び出したんだし。寒いからどっか入るか。あ、でももう暗いし女子高生連れ回すのもダメかな」
もしかしたら気まずいのはあたしだけなのかもしれない。先輩は変わらない笑顔でそう言うと、自然とあたしの隣に並んだ。
「それにしてもおまえ……脚、そんな出して寒くねえの?」
「えーだって、出せるのって今年までですよ」
「見てるだけでさみいよ。俺もおっさんになってんのかな」
「ふふ」
笑うなよ、と頭を小突かれる。おでこが熱くなった。あたしはまだ、こんなにも、先輩に熱くさせられてしまうんだ。
「……そういや、燿の怪我のこと聞いたよ。大変だったな」
「燿に聞いたんですか?」
「うん。実はこないだ燿とふたりでメシ行ったんだ」
「えー! ずるい! また海鮮丼食べたんですかっ」
「わはは、おまえほんと海鮮丼好きなー。また今度連れてってやるから拗ねんなよ」
「また今度」だって。また今度が、あるのかな。
また今度のとき、あたしは先輩の恋人になれているのかな。それとも……先輩と後輩のままかな。
先輩。焦らさないでほしいよ。振るならもう早く振ってほしい。
緊張と恐怖と寒さで、足がちゃんと動いてくれているのかすら分からない。