恐る恐る開いた。
『いまから会う時間ある?』
画面にはたった一言だけ。いつの間にか隣には日和が移動してきていて、あたりまえのように画面を覗きこんで。
「水谷先輩じゃん。『大丈夫です』って送りなよ。早くー!」
「え、え、でも……」
「あれから会ってないんでしょ? 行かない理由が無いじゃん」
「でも……振られるのかも」
「もー晶ってば馬鹿なのっ? もしそうなら連絡なんかしてこないよ!」
そうかもしれないけど。いやでも。先輩は律儀なひとだから、あたしの受験がひと段落したのを見計らって、わざわざお断りになるということも……。
負のループに陥ると抜け出せなくなる。
そんなあたしを見かねてか、日和はスマホを奪い取ると、勝手に返信しやがった。
『大丈夫です』
『よかった。なら、駅前の時計台の下で待ってる。』
『わかりました。すぐ行きます!』
「ほい」
いや、ほいじゃねーよ。
「なに勝手に約束して……」
「ほんとは無理やりにでもこうしてほしかったくせにー。ずっと心に引っ掛かってたんでしょ、先輩のこと」
「……それは、そうだけどさ」
「はい。髪オッケー! 顔オッケー! 制服オッケー! 心配しなくてもきょうも晶はとってもかわいい!」
日和は、田代と別れて燿と色々あってから、以前にも増してどこか強くなった気がする。この女の子にだけは絶対に敵わない説がいよいよ濃厚になってまいりました。
あたしの鞄に必要な教科書類を詰め込むと、それをハイとあたしに手渡して。彼女はとびっきりの笑顔で「いってらっしゃい」と言ってくれた。
もう行くしかないらしい。