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バスケ部は惜しくも決勝戦で敗れたらしい。試合は見に行かなかった。

燿は泣かなかったと、大河くんがあとでこっそり教えてくれた。うちに帰ってきてからも「インハイは絶対に俺が連れていく」と得意げに笑っていた。そんな燿に、お父さんとお母さんは本当に安心しているようだった。

それはあたしも同じだ。やっぱり馬鹿は馬鹿っぽく馬鹿なことを言っているほうがいい。


そんなふうに、なんとなく時間は過ぎて。燿の右脚がそろそろ治るかなってときに、S大の合格通知が来た。

みんなからたくさんお祝いの言葉を貰った。それは本当に嬉しかった。

……でも、相変わらず先輩からの連絡は無くって。半分あきらめかけてきたころ、謀ったかのように、あたしのスマホが震えた。


『LINE:水谷 健悟』


「び……っくりしたあ!」


思わずスマホを落としてしまった。放課後のがやがやした教室。

ケースを付けるのは好きじゃなくて、裸のまま持っていたため、本体の左上が少しだけ傷付いた。やっちまった。


「えー、どしたの」


鞄を肩に引っ掛けた日和が驚いたように笑う。彼女を待たせたくないから早く帰る支度をしたいのだけど、ちょっと手が震えて上手くいかない。

だって。……だって。

あの恥ずかしすぎる告白以来、先輩とは会うどころか、連絡すら取っていなかったんだ。