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中学のころの燿だったら、絶対に悔しがっていたと思う。それも面倒くさいほど不機嫌になって。

想定外にもほどがある。弟はいつの間にこんなにいやらしく笑うようになったのか。


「ふーん。よかったな」

「なにが?」

「大好きな健悟さんに会えたんだろ?」

「ばっ……な、なに言ってんの!?」

「まさかばれてねえとでも思ってんの? おまえ相当分かり易いよ」


嫌な声でそう言った燿は、週刊少年ジャンプを読みながら、ちらりとこちらを向いて笑う。こんなに腹の立つ流し目はそうそう無いと思う。

ていうか、まだ好きとかそんなんじゃないし。やっぱりかっこいいなあって思っただけだし。

なんだか腹が立って、なにも答えずに口を尖らせてテレビを見ていると、後ろからぽこっと頭を小突かれた。


「行ってやってもいいよ、メシ。俺も健悟さんに会いたいし」

「……なんっか納得いかない」

「んだよー。かわいい弟の厚意をふいにすんのか?」


ホント、かわいい弟だったらどんなによかったことか。いつの間にか変に大人びやがって。

ジャンプをぼすんとテーブルに置くと、燿はキッチンに消えた。「腹減った」と頭を掻きながら。ついさっき夕食を終えたばかりなのに、おまえの腹はブラックホールか。


「うどん湯がくけど晶は?」

「いらない」

「あ、そ」


燿はもともと食が細かったはずなのに、高校に入ってからよく食べるようになった。成長期ってのはすごい。

ただ、どれだけ食べても太らないというのは、ちょっと羨ましい。部活のおかげなんだろう。燿はめちゃくちゃ細いんだ。自分のでっかい骨盤が嫌になる。