いくら平気なふりをしていても、悪態をついてごまかしても。あたしはちゃんと知っている。
燿が、本気でバスケをやっているということ。
お姉ちゃんなんか試合を見て泣いたんだからな。それを「関係ない」だなんて、ちょっと淋しいじゃん。ふざけんなよ。
「……もう、どーでもいいよ」
ぽつりと、低い声が落ちた。
「俺なんか、頭もわりいし、好きな子には振られるし、怪我もするし。……もういいや。知らね」
怪我さえしていなかったら、そのだらしないシャツを掴みあげて、立ち上がれなくなるまでボコボコに殴っているところだった。
ふざけんな。……ふざけんなよ、この野郎。
「だったらそれ、みんなに言ってこいよ! お父さんとお母さんにも、大河くんにも、水谷先輩にも、日和にも! 本気で思ってんなら言ってこいよ! 『もうどうでもいい』って、言えるもんなら言ってみろ!」
背中がぴくっと動く。たまらずその広い背中を一発蹴ってやった。それでも黙っているもんだから腹が立つ。
カーペットの上に転がっていた、弟が5歳のころから一緒に寝ているらしい抱き枕を思いきり投げつけても、燿は反応を見せなかった。
甘ったれるのもいい加減にしやがれ。
「バスケ、一生懸命やってるんでしょう。だったらもういいなんて言うな。思ってもないくせに言うな。感情的になって、嘘でもそんなこと言われると……こっちがしんどいんだよ」
「……うるせえ」
「あんたが本気でバスケやってるように、みんなも、あたしも、本気で燿のこと応援してんだよ?」
だから、そんな子どもみたいに拗ねて、こっちの気持ち、踏みにじらないでよ。燿が踏みにじらないでよ。