欲を言えば、彼女になってほしかった。日和さんの恋人になりたかった。俺のこと、男として見てほしかった。
なにがって、とにかく晶の弟ってのが納得いかなかったんだと思う。
「……こないだ、好きじゃなくてもいい、なんて言ったけどさ。そんなの嘘に決まってんじゃん」
「うん……」
「ほんとは俺のこと好きになってほしかったし、そうさせる変な自信もあった。でも俺、分かったんだよね。日和さんにとって俺はどう足掻いても弟で、それ以上にも以下にもならねんだろうなってこと」
倫が、俺を好きだと泣いたときに、全部分かった。きっと日和さんもこういう気持ちなんだろうって。
俺にとって倫が妹以上にはならないように、日和さんにとって俺は、どうしたって弟なんだ。
「いっぱい困らせてごめん。俺のために泣いてくれてありがと。嬉しいよ」
「わ……わたしもね、好きって言ってくれたこと、ほんとにほんとに嬉しかったんだよ。ありがとう……」
まったく、困った。その言葉だけでもう全部報われたような気がするんだもんな。
これだからやっぱり俺の完敗だし、日和さんはすっげえ手強いんだ。惚れたほうの負け。
「もう、こんなふうに泣いちゃって恥ずかしいよ……。燿くんのほうが年下なのに……」
「うん。すげーかわいかったから一生覚えとく」
「ちょっと! 燿くんそういうとこホント生意気で嫌! 晶に言いつけるっ」
「……それはマジで殺されるからやめて」
ぎゅ、と。最後にもう一度抱き寄せると、日和さんもそれに応えるように背中に腕を回してくれた。