駅につくと、先輩は改札の前で足を止めた。
「燿にもよろしく言っといてよ」
「先輩に会ったこと言ったら、きっとすっごく羨ましがると思いますよ」
「お、じゃあ今度3人でメシでも行くかー」
「わーぜひ!」
「なに食いたいか考えとけよ。じゃ」
「気を付けて帰れな」と、優しい笑顔。改札を抜けてから、向こう側の先輩にもう一度頭を下げると、彼は笑って右手を挙げた。
かっこよすぎる。昔からかっこよかったけど、もっとかっこよくなっている。あんなの反則だ。
そういえば先輩はどこに行く予定だったんだろう。あまりにも自然に駅まで送ってくれたから、一緒に歩いているときは気にもしなかったんだけど。
……もしかしたら、わざわざ駅まで送ってくれたんだろうか。
もしそうだったら申し訳ないという気持ちと、嬉しくて死にそうだって気持ち。ぐちゃぐちゃになって、なんだかじっとしていられない。
ゴハン、本当に行くのかな。あんなの社交辞令か。ゴハン行くとしても燿とふたりだったりして。
それでも嬉しかった。当時と変わらない笑顔で話してくれた。
中学時代にぎゅっと閉じ込めたはずの気持ちが、とてつもない熱をもって、身体の奥から湧きあがってくる。
燿が帰ってきたら自慢してやろう。あいつも水谷先輩に会いたがっていたから、きっと物凄く悔しがるはず。