右の足首がじんじんしてきた。完全にひねっている。
ああ、やべえな。試合まであと何日だっけ。4日、いや、3日か。治るわけねえ。ふざけんな。ちくしょう。マジかよ。
「――ひかる!?」
体育館のほうから大河の声がした。すっかりTシャツに着替えた大河は駆け足でやって来るなり、俺の右足首を見て、絶句した。
顔面蒼白って、たぶんこういう感じだ。
「……やっべーかも。つか完全にやべーよな、これ」
「これ……おい、どうしたんだよ! 全然来ねえから心配して出てみたら……なあ燿、なんだよこれ?」
「いや……ちょっと、木下が」
大河の顔色が変わる。これ以上は言わずともだいたい分かったみたいだ。
少しの沈黙が落ちた。すると大河は顔を上げて、俺の肩を抱いて立たせた。
「病院行くぞ」
「えっ、いまから?」
「あたりまえだろ」
参ったな。そんなの、いよいよ本格的にやべえじゃんか。
ガッチガチにテーピングしとけばあと3日くらいなんとかなるだろう。激痛は痛み止めでも飲んで抑えりゃいい。
試合に出るな、なんて。医者に言われたら立ち直れそうにねーよ、俺。
「大河、あのさ。これくらい大丈夫だから……」
病院だけは勘弁していただきたいんだけども。
「大丈夫じゃねえよ、馬鹿か!」
「……すんません」
うちのキャプテンは怖い。
気付けば俺はタクシーに乗せられて、行きつけの接骨院に強制送還されていた。