木下とは、約1年半前、バスケ部に入部したときに知り合った。

俺とは正反対のタイプの選手で、あまり目立たないけれどアシストが絶妙な、結構うまいやつだったと思う。先輩たちも、木下がいると安心すると言っていたし、俺も同じように思っていた。

コートの外ではちょっと気が弱いけど、すげー気のいいやつで。先輩後輩関係なくみんなに信頼されていたのがこいつだ。

この代で一緒に全国行こうな、なんて。馬鹿みてーなことを言いだしたのも木下だった。

木下のアシストと、大河のシュートスキルと、俺の機動力があれば、絶対に全国に行ける。冗談みたいに3人でそう話していたけど、本気で思っていたよ。


だからこそ、ショックだったんだ。

たったひとつの無理なプレーが、木下をコートから追いやってしまったこと。

半月板損傷だった。すぐに治療をすればよかったものを、こいつはそれを隠して部活をしていたから、発覚したときにはもう取り返しのつかないことになっていて。

木下はそのままバスケ部から姿を消した。それがちょうど1年前の話だ。


「……なあ、おまえもオレと同じ苦しみを味わえよ、東出。今度の日曜は決勝なんだろ? すごいなあ、オレ抜きでもウィンターカップ行けるじゃん」

「木下……っ」

「しょせん、おまえらにとってオレなんか、この程度の存在だったってことだろ」


それは違う、と。面と向かって言ってやりたくて立ち上がった。

いや、立ち上がったつもりだった。俺の脚は立ってくれていなかった。右脚だ。やべえ。これは結構やらかしている。


「おい木下、待てよ!」


違うって言ってんだろ。あと一歩でインハイを逃した先輩たちの分ももちろんだけど、木下、おまえの分もだよ。全部まるごと背負って、俺たちはここまで来たんだ。

勝手に勘違いして、なんてことしてくれてんだよ、この野郎。