とりあえず駅まで全力ダッシュ。走る部活やっといてよかったと思うのはこういうとき。

見事に駆け込み乗車をキメると、途端に通勤ラッシュ独特のむわっとした空気が顔面に襲ってきて、朝からきもちわりい。

朝の電車は大嫌いだ。原チャリの免許でも取ってそれで通学したいけれど、ばれたらソッコー停学なので、いまは我慢。バスケ部のやつらに迷惑かけるわけにはいかねーもんな。

それにしても、オッサンの加齢臭ってのはどうしてこうも強烈なのか。俺も20年後にはこのにおいを漂わせているのかと思うとちょっとキツイ。


地獄の通学電車を降りると、だいたい学校のやつに会う。


「あ、ぴかるんだー! おはようっ」

「おー望月(もちづき)じゃん。はよ」


肩を叩かれて振り向くと、同じクラスの女子が、きれいなボブの髪を揺らしていた。

同じ学年の女子にはだいたいぴかるんと呼ばれている。これは小学生のときからだ。ガキのころはあまり好きな呼ばれ方ではなかったが、いまは結構どうでもいい。


「そういえばバスケ部、あとひとつ勝てば全国大会だって聞いたよー! すごいね! がんばってね!」

「おー。暇なら見に来いよ」

「残念ながら週末はユウくんとデートなんですう」

「うわ、でたよ、リア充」

「えへへー。うらやましい?」

「ぜんっぜん。まったく。これっぽっちも。よゆー」


いつもこんな調子で、誰かとしゃべりながら歩いていると、あっという間に学校に到着してしまう。

望月とは下駄箱で別れた。どうやら彼氏の教室に行くらしい。全然うらやましくなんかない。

対する俺はというと、男くせー体育館へ急ぎ足で向かうだけだ。