5分でメシを食い終わると、自分の部屋に戻って30秒で着替えを済ませ、その足で洗面所に向かう。

ドアを開けるなり、まだ眠たいままのまぶたに眩しいものが刺さった。洗面所と洗面台の電気が点けっぱなしだ。これはどう考えても晶のしわざに違いない。


晶は昔から暗闇が物凄く苦手で、ガキのころは電気の消えた部屋で寝るのさえ嫌がっていた。

それだけならいいが、夜は暗いトイレや風呂に行けなくて、わざわざ俺に先に灯りを点けさせに行かせていたほどで。

べつに幽霊のたぐいが怖いわけじゃないらしい。ただ単に暗いのが苦手なんだと。よく分かんねえ。

いまはもうずいぶん克服したみたいだけど、あいつの電気を消さない癖は18になったいまでも抜けきらない。誰が消してると思ってんだ、この野郎。おかげで目が覚めたわ。

あいつ、こんなんで東京で一人暮らしなんかできるのかよ。


「ねっむ……」


あくびを噛み殺して歯磨きを済ませ、顔を洗い、めがねからコンタクトへとシフトチェンジする。

髪にそんなにこだわりはない。ワックスとかジェルとか使ってるやつもいるけど、べたつくからあまり好きじゃない。どうせ朝練でぐちゃぐちゃになるし。


「ひかるー? もう6時45分になるけどいいのー?」

「えっ、マジで! やっべー」


ブレザーを無造作に羽織って、スクールバッグとバッシュを掴んで、そのまま家を飛び出した。きょうは弁当もちゃんと持った。

やべえ、電車、間に合うかな。遅刻したら大河がうるせえんだ。