当時からすらりと背が高いひとだったけれど、あのころよりもっと身体が大きくなった。それでも歩幅が合っているのは、先輩がゆっくり歩いてくれているからだってことに気付いて、胸が高鳴る。
「何年ぶりだ?」
「最後に会ったのはたぶん……燿が中3のときだったと思います」
そうだ、もう2年も前。あれは、燿がどうしても水谷先輩の試合を見に行きたいと駄々をこねたから、あたしも仕方なくついていったんだ。
本当は、仕方なく……じゃ、なかったけど。
「うわーそっかー。燿にも会いてえなあ。あいつ、絶対うちの高校に来ると思ってたんだけどな。バスケのセンスもあったし」
「あんなの強豪校に行ったらずーっと補欠ですよ」
「んなことねーって。結局おまえらって同じ高校なんだっけ?」
「そうですよ。きょうもあいつお弁当忘れて、あたしが教室まで届けに行ったんですよ! 信じられなくないですか!」
「はは、晶は燿に甘いなあ」
甘いも酸っぱいもねーよ!!
先輩の笑顔に免じて、ここはなにも言わないけど。
「あたしはあんな弟よりも先輩みたいなお兄ちゃんが欲しかったです……」
「マジか。嬉しいこと言ってくれるなー」
きっと先輩は寝起きもかっこいいんだろう。スウェットはお尻まで下がっていないだろうし、黒縁めがねもきっとキマる。
そしてきっと目玉焼きに醤油はぶっかけない。あの黒々しい目玉焼きを思い出して、また鳥肌が立った。