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めずらしく晶が朝からばたばたしているので、何事かと思えば、どうやらきょうは受験らしい。

姉弟そろって大変なんだから、と、母さんがひとりごとのようにつぶやいた。たぶん、晶の受験と俺の大会のことを言っているんだと思う。

まあ、心配しなくとも晶はサクッと合格するだろう。本人も特に緊張するでもなくしれっとした顔をしてやがるし。


「もう出んの?」

「うん」

「まさか東京まで受けに行くのかよ?」

「そんなわけないでしょ。馬鹿かよ。知ってたけど」

「……うぜー」


ただ、あれから数日たつのに健悟さんとまだきちんと話していないらしく、姉の機嫌はすこぶる悪い。そんでもって俺に当たってくるのはマジで面倒くさい。

味噌汁をずずっとすすりながら、鞄に弁当を詰めている姉を睨むと、思いきりすねを蹴られた。うぜえしいてえ。


「じゃ、あたしもう行くねー」

「ちょっと晶、忘れ物はないの? 確認した?」

「したよ。お母さんのほうが緊張してどうするの」

「だって受験なのよ。ほんとにあんたは肝が据わってるっていうか、図太いっていうか……」

「いや、図太いってなに」


母さんは超が付くほどの心配性だ。俺の試合の朝もこんな感じ。無駄に心配するのはたぶん、本人がちょっと抜けてるからなんだろうな。


「へんな凡ミスすんなよ」

「燿にだけは言われたくねーよ」

「おまえなー」

「いってきまーす」


俺を見下ろして鼻で笑うと、晶はそそくさと家を出ていった。きょうは父さんに駅まで送ってもらうらしい。

なんとなく、俺のほうがそわそわした。晶のいない朝食ってのは結構淋しくて、春からは毎日こんなんになるのかなってちょっと思った。