倫の栗色の髪を右手だけでかき上げてやった。やわらかい猫っ毛が指に絡みついて、なんとなく、倫に女を感じた。だからどうってわけでもねーけど。

前髪の向こうには泣きそうな顔の幼なじみがいて、やっぱりなんか調子狂う。


「……ひかるといっしょの学校行きたかった」

「おー」

「すき」

「それたぶん1億回くらい聞いた」

「だいすき」

「分かったって」


そう言うと、倫はぎゅっと俺の首に抱きついて。そのまま離れようとしないんだから、困った。


「倫をひかるの彼女にしてよお」

「んー、それは無理」

「なんで」

「なんでも」


倫の髪がはらりと落ちて、俺の首を優しく撫でる。彼女を抱えたままベッドに座り直すと、倫は抵抗しなかったけれど、やっぱりその両腕は俺の首に回されたままで。

俺以外のやつにはこんなことしていないと信じてはいるが、さすがにこれはちょっと心配になる。


「倫」

「……なあに」

「あんまり軽率にこういうことすんなよ」

「軽率じゃないもん」

「そんならいいけど、俺以外だったらいまごろおまえ食われてるからな」

「……ひかるにならなにされてもいい」

「だからそういうことを簡単に言うなっつってんの」


いくらはす向かいの距離だからって、ルームウェアのままうちに来たりして。あまりに無防備すぎる。逆に欲情する余地すらねえわ。